笑顔と祈りいろいろな有力な企業や個人から祝いの言葉とともにプレゼントが届く。 手紙なり、電話なりでお礼の言葉を返したモクバは、兄や秘書たちから、会社を追い出された。 誕生日くらいゆっくりしろという事なのだろう。 学校と、会社、屋敷とを慌ただしく往復する毎日に確かに疲れている。 モクバは周りの心使いをありがたく思いつつ会社を後にする。 リムジンで屋敷に向かう。 兄により海馬という家と会社が手に入り、副社長という身分になって、欲しいものはすぐに手に入るようになった。 だが、ある出会いで本当に欲しいものが見つかってしまった。 側にあるだけで心が落ち着くような満たされるような幸せだ。 屋敷に着くと使用人たちが一斉に迎えてくれる。 彼等からは朝のうちに祝いの言葉を貰っている。 一同主人の誕生日の為か軽く浮ついているように見えて、モクバは内心苦笑する。 びっしり厳しくしつけられ、まったく感情を見せずただただ働いていた彼らが変わったのが可笑しくもあり、嬉しくもある。 自室に行き、服を着替えている途中で内線がかかりモクバはすぐに出る。 「お客さまがいらしております」 「分かった」 モクバは部屋を飛び出す。 モクバにはその訪問者が誰であるか検討がつくからだ。 玄関に出ると綺麗な笑顔が迎えた。 「モクバ君誕生日おめでとう」 静香はにこりと笑って花を差し出す。 「おう、誕生日おめでとうな。みんなでケーキ焼いて来たぞ。さっそく茶にしようぜ」 静香の兄城之内もモクバにニッカリ笑う。 変わらない彼等の笑顔にモクバは今までの疲れが飛んでいくのが分かる。 出会ってから毎年誕生日にはこうやって祝ってくれる彼女たち。 モクバは嬉しくて、思わず静香を腕に抱き込んだ。 普通の家族でのシンプルだけど暖かい誕生日祝い。 義理の固められた高価なだけの祝いではなく。 夢に見ていたからとても嬉しい。 「も、モクバ君?喜んでもらえて嬉しいけど花がつぶれちゃうよ」 静香は別の心配をしているようでモクバは内心苦笑する。 できる事ならこの笑顔をずっと手にしていたいのだけど。 城之内が咳をして、恨めしげな声を上げる。 「モクバぁ?」 さすがに城之内のおどろおどろとした怒りを感じてモクバはしぶしぶ静香を解放する。 静香は男性ズのやり取りに気が付かずに、花を確認して傷付いてないことを確認すると安心して再び笑顔を見せる。 静香の家の庭で咲いた花だそうだ。 やっぱり買って来た高価な花より、そういう心使いが嬉しい。 「ありがとうだぜぃ。静香、城之内。じゃあ、テラスにでもいくか」 「そうね。今日は良い天気だから」 モクバの声かけにより一同動き出す。 その後兄妹とお茶を楽しみ、夜は(根性で)早めに仕事を終えた兄と兄妹とで夕食を楽しんだ。 帰路につく兄妹を見送った後、モクバはテラスに出て星を見上げる。 近年モクバの誕生日は雨が多いかったが今日は遠くの星まで見渡せるような良い天気だ。 この日、人々は星に願いをかける。 モクバはあまりそういう風習は信じない方だが、今日だけは違った。 祈る。 どうか、来年も、それからずっと先も、今日のような誕生日がおくれますようにと。 end モクバ誕生日おめでとうということで短文。 遊戯に戻る |