アトラクションウオーズ

『そういえば、来週新しい海馬ランドのアトラクションが公開されいるんだよな』
ぴっ。
暫くして。
ぴろろ
『わあ。それはどんな感じなの?』
『シューティングゲーム、銃で標的を打って点数を競うゲーム。これは兄様の担当。オレはコースターなんだけどさ、空の中を走るんだ。綺麗だぜ。ちょっと自信あるんだ』
ぴっ。
暫くして。
ぴろろっ。
『わあ、楽しそう。どんな感じなんだろう。いいなぁ』
モクバはがばりと起き上がる。
震える手を押さえ携帯のボタンを操作する。
ここはモクバの私室。夕食後のひと時を思い人とメールのやり取りをしていたのだ。
『じゃあ、来週なんだけど行かない?オープニングセレモニーがあるんだけど招待するぜい!』
興味を持ってもらえたのだからそれに食いつく。
相手に押し付けになってないか気にしながらも、返事を待つ。
着信が来た。
『えっ。行きたいな。でも忙しんじゃないかな?迷惑になりそう』
『大丈夫だぜい。セレモニーっていっても小さなものだし。兄様が主になってするから。 俺は今回は暇なんだ』
『えっ、でも。いいのかな』
『全然平気だぜ。むしろ来て欲しいし!』
モクバ見えないところで拳を握る。もう一押し。
『じゃあ、遠慮なく』
モクバよっしゃあ、と心の中でつぶやく。
『じゃあ、来週日曜の10時に海馬ランドの前で』
『わかったわ』
その後少し取り留めのない話をやり取りしてメールを終える。
携帯をベッド横のテーブルにそっと置いて、モクバは顔を緩める。
「やったぜい!大成功!!」
思わず飛び跳ね、はしやいでしまい隣の部屋の兄が驚いてやってきてしまったりしたがモクバは 想い人を誘えた事で有頂天になっていた。


そして約束の日曜。
「おはよう、モクバ君」
「よう」
「‥オハヨウ‥」
妹に似てきれいな面立ちに不機嫌という文字を張り付かせ、城之内がモクバを見る。
モクバは思わず脱力していた。
「なんで城之内がいるんだよ」
静香がモクバに渡されたパンフレットに気を向けているうちに城之内にこっそり恨めしげに言う。
「ばかやろう。お前らを二人だけにできるか」
城之内は半眼になってモクバをにらむ。
モクバが城之内の妹である静香に思いを寄せていることを海馬に聞いて、早速牽制に来たようだ。
モクバははー、とため息をつく。
しかし、静香に声をかけられれば二人とも表情を笑顔に戻す気配りは忘れない。
もしかして自分達が行動する時は兄も自然に同伴になるように静香の中で 決まってしまったのだろうか、とモクバは危惧する。
とそのとき。
「わははは、凡骨風情がこの海馬ランドに何をしに来た」
軽く風を巻き起こし海馬登場。
本日のセレモニーの為、いつもの白いコートでなくスーツ姿だが 何気に裾がなびいているのがポイントである。
モクバは頭を抱える。
「うるせーな、金はちゃんと払うんだから人がどこで何をしようと関係ないだろう。てか客なんだからその態度はどうかと思うぜ!」
結局城之内も反射的にがうっと吠えてしまい。
そんな兄ズのやり取りをみて静香は楽しそうに笑っている。
モクバはしばらく兄達が言い合う側で目線をこの世以外に飛ばしていたがはっと我に返りため息をつく。
「結局保護者同伴か‥」
折角のデート(もちろんモクバだけが思っていたのかもしれないが)も早々から波乱の予感である。


取りあえず新アトラクション公開の時間までもう少し余裕があったので、別のアトラクションを楽しむことにする。
静香とモクバはパンフレットを見ながら並んで歩く。
ちなみに城之内も、海馬も後ろをついてきている。
先程、モクバは城之内河井兄妹が見てない隙に、兄の足を思いっきり踏んで睨んでみた。
聡い兄は自分が邪魔であることに気がついたようだが、城之内には背を向けられないようだった。
そのうち新アトラクション公開の時間が迫ってきてモクバは兄妹を案内する。
さすがの海馬も新アトラクションの公開セレモニーに行くためすでにモクバ達の前から去っている。
そこは既に沢山の客が並んでいる。
「わ、凄い人…」
「げ、並ぶのか、今から」
行列をみて城之内はうんざりしてみせる。
モクバはえへんと胸をはる。
「だれと一緒にいると思っているんだ?二人ともこっちだぜい」
「え?え?」
「モクバ?!」
モクバは入り口ではなくアトラクションの建物の裏へ歩いていき、兄妹は顔を見合わせモクバの後ろ姿を追う。
厳いサングラスをしたお兄さんが二人守る関係者・従業員専用の入り口に入っていく。
兄妹は戸惑ったがモクバと離れるのも不味いと思いコソコソとついていく。
「ちょうど始まったぜい」
アトラクションの入り口には人があふれ、臨時の小さなステージが出来上がっている。
海馬が緊張を微塵もみせず挨拶している。
アトラクションの特徴や、遊び方を簡単に説明していて、つかかることも間違えることもなく。
「さて、説明ばかりしても面白くないので私が実践してみせましょう。おい、凡骨出てこい」
「い?」
城之内が眼を点にしてしまい、モクバも静香も思わず城之内の方を見る。
入り口の隅にいた城之内を海馬はすぐに見つけ、怖気尽くのか、など挑発している。
城之内が乗らないわけがなく。
またまたがうがう吠えながら海馬の前までいってしまう。
「打ち合わせでは客の中から適当に選ぶはずだったのになぁ。兄様がでることろじゃないのに」
モクバがぼそりというと、兄が目線を向け手招きをする。
しぶしぶモクバが兄に近寄るとマイクを投げられモクバはあわてて受け取る。
「あとは副社長に説明させよう」
平然といってみせてモクバはため息をつく。
何度か打ち合わせの席にいたので、アトラクションの説明については分かっている。
予定と違う展開にあわてるスタッフの気配や心配そうな静香の目線に気がついて彼女等の精神衛生を考えモクバは一呼吸つくとマイクに向かい話だした。
開発者である兄と、城之内の適応力が強く、無意識で無理のないパフォーマンスで周りの客の歓声や、どよめき、笑いを誘い説明を終えた。
一般に解放され、つぎつぎと客が遊び始める姿を眺めながらモクバは一息つく。
ステージからおりたモクバに静香が笑顔で近付く。
「すげえよな」
モクバは静香に笑いかける。
静香は首をかしげる。
「兄様や、城之内ってさ、こう、華があるんだよな。人に魅せるべくある人というか」
ゲームを続けている兄達をみていうモクバに静香は笑う。
「モクバ君も凄いよ」
「え?」
いきなり自分も凄いといわれモクバは眼をぱちくりとさせて静香を見る。
そんなモクバの反応に静香は笑ってしまう。
「自覚ないのね。だってこんなに沢山の人の前で話せるなんて凄いと思うよ。それに皆に慕われているのも分かるし」
静香が目線を向けた先に、順番待ちをしている家族がいて、二人の子供がちらちらとモクバを見ている。
モクバが子供達(兄弟だろう)の視線に気がついて手を振ると、二人はモクバに手を振り返し、顔を見合わせ、次に笑って両親の後ろに隠れる。
照れているのだろう。
そんな姿を見てモクバは心が和むのを感じる。
「こんなに沢山の人たちに笑顔を送れるモクバ君の力だって凄いと思う」
「静香ちゃん‥。あ、ありがとう」
モクバは照れて頭をかく。
相変わらず兄は城之内と悪口の応酬をしながらゲームをしている。
彼がモクバの見せ場を作ってくれていたのかと、今になって気がついた。
「そういえば静香ちゃんは遊ばないの?」
「えっ!うーん。止めておく。私鈍いから」
モクバがアトラクションを案内しようとしたが静香は慌てて手を振り断る。
「適材適所っていうのかしら。う。」
「なるほど」
静香の反応にモクバは笑ってしまう。
「だからモクバ君にはモクバ君の凄いところがあるんだよね」
静香はそういうと、「じゃあ、私はどうなんだろう?お菓子作りならちょっと自信あるけど」などと首を傾げてみる。
彼女の凄さは望む時に生まれ与えてくれる強い言葉だとモクバは思う。
魔法の言葉だ。
たしかに彼女の兄は喧嘩ではこの街で右にでるものは自分の兄くらいだとモクバは思っている。
最近はデュエリストとしても頭角を表しはじめ、城之内の魅力に惹かれ、目標とするデュエリストも多い。
率直に表すなら城之内は『動』だ。
ならば静香は反対の『静』。
いつもは穏やかでどちらかというとのほほんとして見えるが、実は強い。
城之内を支える基盤なのだ。
彼女の声や存在は『動』である城之内を幾度となく立ち上がらせたはずだ。
自分も兄に対してそのような存在であると静香は言ってくれているのだろうか。
「じゃあ、今度御馳走してくれよ、お菓子」
「いいわよ、口にあうかは分からないけど」
一生懸命次の約束を作るモクバに気がつかず静香はくすりと純粋に笑う。
「私には遠い存在だなぁ。モクバ君も」
そこでモクバは血がひくような気分を味わった。
まさか自分にそんなイメージをも持たれるとは思わなかったからだ。
「し‥」
慌ててフォローしようといたモクバの耳に轟音が響き渡る。
海馬コーポレーションの副社長という身分であるため嫌でも何度か聞いたことがある音、銃の音だ。
別の意味で血がひく。
静香も訳が分からないながらも緊張し固まっている。
「楽しみの所悪いが、お邪魔させてもらうぜ。海馬瀬人はどこだ?!」
どうやら兄が目当てで武器を手に乱入したようだ。
それなりに体格のよい男達がモクバの認識できるだけでも5人。
「ひい」
客が突然の出来事に火が飛び移るように騒ぎ出す。
まずい、とモクバは思う。
このままパニックになれば乱入者を刺激することになる。
案の上、乱入者の一人、多分リーダー的存在のものが銃を打つ。
轟音は室内型のアトラクション内を駆け巡り。
「静かにしろ。お前等の命なぞ糞にもならんのだからな、失いたくなければ大人しくしていらない考えも起こすな?」
暗く笑う。
「みんな落ち着いて、大丈夫だ!静かに!安全はオレが守るぜ」
モクバが思わず叫ぶ。
「そうだ、オレが目当てなんだろう。他の者には手をだすな。皆大丈夫だ。姑くの間静かにしていてくれ」
海馬も乱入者達の前に進み出る。
懸命なモクバの声と冷静な海馬の声にまず子供達が勇気つけられたのか大人しくなる。
それに釣られたように大人達も静かになり身動きせず固唾を飲んで見守っている。
「貴様らがあの警告文の差し出し人か。迷惑なことをしてくれる」
「どの警告文かな、恨みなぞ毎日買っているだろう?」
「それとも誰かに雇われたな」
海馬は躊躇なく進み出て銃を構える一人の男の前まで進み出る。
「う、動くな、打つぞ」
隙のありそうな男の手が震えそれを狙ったように海馬が銃を持つ手を蹴り上げた。
その動きに他の仲間も動こうとするが城之内に拳ときついケリを喰らい倒れていく。
海馬と城之内の話し合ったような連係プレーで次々と乱入者が床に沈み、残るは一人となってしまった。
モクバは少し離れたところで静香を背面に隠し見守っている。
「くそう!」
「ふん、たいしたことないな。さあ、貴様はどうする?ココで沈められたいか、それとも奇跡を狙ってオレを倒すか?」
「オレは後者をえらぶぜ」
「できるかどうか。まあ、相手にしてやろう。貴様なぞ数秒で片付けてやるわ!」
いつもの笑いを響かせ銃を構える男に狙いづらいよう身体を翻し、アトラクションの奥へと海馬は走っていく。
一瞬モクバに眼をやって。
モクバは見えたか分からないが頷いて兄の目線に答える。
単純な男は海馬の誘いに乗り、アトラクションの奥に向かっていく。
「さあ、今のうちに!」
囮となった兄に答えて、モクバはスタッフに指示し客をアトラクションの外に出す。
客は恐怖を押さえ素早くモクバやスタッフの指示に従い建物より逃げだしていた。
モクバは客が無事に逃げ出したことを確認すると、静香の手を引き外に出る。
どうやら近くに配備されたSP達は乱入者達にやられてしまったらしい。
モクバは素早く他の部署のSPたちに応援を呼び、警察にも連絡を行なう。
と、静香が建物の中に入ろうと身を翻したのでモクバは驚いて手を掴んで引き止めた。
「静香ちゃん!どこに行くんだ?!」
「だってお兄ちゃんがいない。きっと中に残っている」
「なんだって」
モクバはしまったと舌を打つ。
静香に気を向けていたため、城之内の事は忘れていた。
再び建物内に向かおうとした静香をモクバは引き止める。
「ダメだってっ!!危ないから、静香ちゃん!」
「でも!」
「足手纏いになるだけだ!おれ達は信じて待つしかない」
お願いだから、と引き寄せると静香は自分を支える力をなくしたのかモクバにもたれるように座り込んでしまった。
震える静香の肩を支えモクバは建物の方を見ると銃声が響き、静香と一緒に息を飲む。
それから静寂が続き、幾らかの時間が過ぎて。
長身の2人の影が見え、モクバはほっとした。
並ぶと喧嘩する二人だが珍しく大人しくモクバ達の側まで来る。
「兄様大丈夫?!城之内も!」
兄が顳かみあたりにハンカチを当てていたため叫ぶモクバに海馬はかすり傷だ、といつもの冷静さで答えほっとする。
「ああ、オレなんて無傷だぜ〜」
元気に答える城之内に静香もほっとしてみせる。
と城之内が顔をしかめ、モクバと静香をばりばりと引き剥がした。
「あ」
「えっ?」
モクバはあまりに密着していたことにいまさらのように気がつき顔を赤くしたが、静香はきょとんとしてそれを笑顔に替えて「よかったー。お兄ちゃん!」と城之内に飛びついていた。
その時やっと警察とSPが駆け付け、海馬ランドに平和な騒々しさが戻ってきた。
警察に引き連れられていく(ちなみに一人は救急車に乗せられた。)男達を見送りつつ。
「ところでモクバ。あれを案内するのではなかったのか」
モクバを見て、静香に目線を向け海馬は言う。
ちなみに救護室の医者が飛んできて海馬の傷の手当ては終わっている。
「あ、そうだった、でも‥‥」
騒然としている周りを見てモクバが言うと、海馬が笑ってみせる。
「あとはオレに任せておけ。今日は代役もしてもらったしな」
素っ気無く言うと海馬はモクバの肩を押す。
「あ、ありがとう兄さま」
手を振りモクバは城之内と話す静香に声をかける。
「静香ちゃん。まだ時間大丈夫?」
「え、うん」
静香が頷くとほっとして笑いかける。
「もう一ケ所案内したいんだ、どう?」
「あ、そういえば新しいアトラクションもう一つあるんだよね、行く行く」
静香が嬉しそうに笑う。
モクバが手を引くと二人は駆け出した。
「ん?まだあるのか?今日は‥」
当然のごとく二人を追おうとした城之内の肩を海馬が掴む。
「済まないが事情聴取だそうだ、付き合え」
にやりと笑う海馬に城之内はモクバ達の後ろ姿と海馬の顔を交互に見る。
「なっ!て、あの二人だけで行かせられるか!」
「モクバはここの経営も関わっておるから庭みたいなもんだ、心配いらん。お前の妹とて小さな子供とは違うだろう。少しは羽を伸ばさせてやれ」
海馬はおもむろに城之内の首に手をまわしずるずると引きずっていく。
「くそー!!離せ!し、静香あああ」
城之内の情けない叫び声が木霊したがあいにくとモクバにも静香にも届かず。


「ここだぜい」
モクバが案内した場所は、他のアトラクションに比べ全くと言ってよいほど人気がなかった。
「え?ここ?」
「いいから、こっち」
やはり従業員専用入り口から入る。
入ると静まり返り、照明は一部しかついていない。
そこには作業服を来た人がちらほらいて。
「モクバ君、ここ」
「うん。実は、ここは来週オープンなんだ」
「えっ?」
こっち、とモクバが静香の手を引く。
優しい笑顔を見せた中年の男性が待つゲートにつく。
コースターが止まってモクバと静香を待っていたようだ。
「モクバ君どうして?」
「あ、最終調整は済んでいるぜ、ばっちり安全!心配ないよ」
ほらほらと急かされ静香は、モクバと一緒にコースターに乗り込む。
セッティングを終えるとコースターがゆっくり動き出す。
開けた先はたしかに空が見えて。
「わあ」
静香は思わず歓声を上げていた。
目の前を鳥達が羽ばたいて横切ったり、雲のなかをぐぐり抜けるかのように視界が曇ったり晴れ渡ったり。
風船が飛んで昇るのを見送り、飛行機が平行して飛ぶのを眺めたり。
「これはソリットビジョンを組み込んだジェットコースターなんだ」
モクバが説明してくれる。
「静香ちゃんの言葉がヒントになったんだぜい。だから一番に静香ちゃんに乗って欲しくてな」
お礼に、と笑うモクバに静香は驚いてみせる。
「え、私が?」
バトルシティで決勝戦に向かう飛行船の中でぽつりと静香が言った言葉をモクバが心に留めていたらしい。
そんな一言にインスピレーションを引き出して、想像を膨らませ、なおかつ実現したモクバに静香は感心してしまう。
「凄いね、モクバ君。さすがだなぁ」
「そんなことないよ。欲しい時に欲しい言葉を与えてくれる静香ちゃんのほうがすごいと思うぜい」
「え?」
「適材適所って言っていただろう?静香ちゃんもちゃんと城之内と一緒に戦っていたんだぜ、あの時。そしてそれからも。静香ちゃんにあった戦い方でな」
あの時と言うのは多分バトルシティで、戦う兄達を見守っていた時ではないかとおもう。
モクバの前で自分は見ているだけで約に立たないと嘆いた記憶がある。
静香は戸惑いつつもモクバを見る。
「そうかな」
「ああ、だからオレも静香ちゃんのこと尊敬するぜい。静香ちゃんのことす、好きだせい」
言ってしまった、とモクバは思った。
静香への思いと、彼女がどれ程モクバにとって貴重で大切な存在であるか語ったつもりで、モクバは満足していた。
静香がどんな返事を返したとしても。
しかし、静香は。
照れも戸惑いもせず、にっこり笑う。
モクバはその顔をみてトキメキを覚える反面嫌な予感がした。
「ありがとう。私もモクバ君のこと大好きだよ」
えっと、それはどう言う意味でしょう。
心の中で叫ぶモクバには気がつかず、静香は空を見上げる。
「ここ来週オープンするんでしょう?モクバ君が今度もセレモニーするの?」
「え?ああ。うん」
「じゃあ、私もくるね。友達としては絶対応援しなきゃ」
「あ、アリガトウ。」
やっぱりそうきましたか。
モクバは落ち込むのを感じた。多分恋愛感情と言うものが彼女の中に芽生えていないと思う。
まあ、今まで病気との戦いがあったので、静香の精神面が年令にくらべ、純粋で未熟なのは仕方ないのかも知れない。
しかし、焦ることはないかとモクバは考え直す。
モクバにはモクバの戦い方があるのだろう。多分。
まだまだ時間はあるのだから。
ふと、目線を戻すとモクバが笑って静香に言う。
「これからがまたお楽しみだぜい」
「え」
今まではスピードもそんなになかった。
当然だろう、ゆっくりと高いところに昇っていたのだ。
目の前には急な滑走路が見えて。先は複雑にはり巡らされている。
「ええええ!!きゃああ」
静香が悲鳴とも歓声とも言える声をだしてモクバにしがみついた。
「え、し、静香?!苦しー!!」
嬉しいと辛いを交ぜ、あせったモクバの声も滑るコースターと風に吹き飛ばされていった。


補足
1週間後、モクバは新アトラクションのセレモニーを無事終えた。
静香の姿が見られていたのはいうまでもない。
そして、城之内が苦肉の作として考えたのか、遊戯達を(愉快な仲間達?)呼んで、終始賑やかに過ごすことになったのだった。
モクバの戦況はまだまだ厳しい。


end




モク静話です。
「一枚から〜」のあとの話です
再び兄様達でばっています。
それは私の趣味。好きなのー。
ギャグのようでシリアスのようで。
アクションも目指しましたが無理でした。ふふふ。
静香はまだお兄ちゃんの方が好きで大事みたいです。
きっとそのうちモクバの方に天秤が傾く。

さらっと短くギャグっぽく書きたかったのにまたまた長く(涙)


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