大地の子供2

唖然と走り去る言葉を話す汽車を見送る一同。
いきなり帰る手段がなくなった為に、不安になった駿は号泣している。
他のメンバーは彼を前にして途方に暮れる。
しかし、大地は一番に正気に返る。
「だー。泣くなって。駿。つまりはスピリットってのを探して、オファ二モンに会いに行けばいいんだろ。 そうしたら帰れるわけだ。」
「そうね、まずはそうなるわね。」
「いよいよゲームらしくなったな。」
「わくわくするじゃない。」
「そ、そうかぁ。」
駿も、涙をぬぐい気を取り直して軽く笑顔を浮かべる。
盛り上がり始めたメンバーを輝一は軽く苦笑を浮かべながら見守っている。
大地はその姿に軽い違和感を覚えたが、すぐに意識がそらされる。
「で、スピリットってなんだ?」
「そ、そうね。」
「名前の雰囲気からいうと宝石とか宝物みたいだけどなあ。」
「そういわれるとそういう気もするが。」
うーん。と一同が首をかしげると、岩の生き物達が声をあげる。
「俺聞いたことあるよ。」
「僕も〜。」
解決策が早くも見つかったようで一同目を輝かせる。
「で、スピリットってなんだ?」
「んー。すごく大切なもの。僕達もあまり見せてもらえないよね。」
「僕も少し見せてもらったけど長がいつもは僕達の知らない所になおしているから。」
「すごくきらきらしているの。」
「でもすごく小さいね。手のひらにすっぽり収まっちゃう。」
「ふーん。やっぱり宝石の類か?」
「うーん。勇者の証だって。宝石とはまたちょっと違うよ。」
要領を得ない生き物達の話に子供達は再び首をかしげる。
「ああ、ここか。」
その生き物の仲間らしき物がよって来る。
大地たちをまじまじとみてふむふむと関心している。
どうやら大地たちを囲む生き物より年は取ってるように見える。
「本当に人間の子供達だな。」
「何?それにあんた達は?」
あまりにまじまじと見る生き物に大地は少しむっとする。
そんな心情を察したのか相手は軽く苦笑する。
「悪いね、珍しくて。俺達はゴツモンだ。ここはゴツモンの村。」
「ゴツモン…。」
岩でできた丈夫そうな手を峠の先に向ける。
「長が会いたいそうだ。俺達も歓迎するぜ。」
大地たちは顔を見合わせる。
「まあ、全くどっちにいっていいか分からないのだし、ここは素直に招待を受けるか?」
「そうね。それに会いたがっている長ってのいうのがスピリットを持っているみたいだし。」
「詳しく話が聞けるかもな。」
行くか、と頷きあう。
「決まったみたいだな。というわけで案内するぜ。」
こっち、と手招きされて大地たちは着いて行く事にする。
ゴツモンに案内され歩く大地たちの目に雄大な自然が飛び込んでくる。
「わあ。」
永遠と思われる位続く生い茂った木々。
その間から降り注ぐ太陽。
そして木陰からいろんな生き物が顔を覗かしては、大地たちと目が合うと隠れる。
その生き物を指差し、ゴツモンに何か聞くと、あっさり答えが返ってくる。
自分達が住む世界とまったく違う、静かで穏やかな世界に大地たちはただ関心している。
いや、感動しているというか。
そんな子供達の姿にゴツモン達も感心している。
「そんなに感動することかね。」
「僕達の周りはいつもこんな感じなのにね。」
付いてきて大地たちの周りを囲む子供達も大地たちの反応を楽しむような、軽く呆れたような声だ。
「少なくとも俺達が住んでいる周りではこんな風景は見れないかな。」
「ふーん?」
「じゃあ、いろいろ教えてあげる〜。」
そういってゴツモンの子供達は見えるものをそれぞれ指差し、あれはおいしい実であるとか、あの雲が変わると嵐が来るとか、我先にと教えてくれる。
ゴツモンの子供達が楽しそうに歌いそれを聴きながら大地たちは歩いていく。
ふとつい最近まで長期休暇の時には逢えていた人たちを思い出され大地はなんとも切ない気持ちになったが。
ふと、視野が開き、大地たちは目を細める。
眩しさに慣れた目を向けると、そこは岩が大小いくつも連なる場所があり。
そこがゴツモン達の村なのだと分かる。
大地たちが近寄っていくと、ゴツモン達が出迎える。
その真ん中に立つのは目をいきいきと輝かせたゴツモンが立っている。
他のもの達とは違う風格があって。
「ようこそ、ゴツモンの住む村へ。デジタルワールドを救う子供達よ。わしらはソナタ達を歓迎するよ。」
手を開いて大地たちを歓迎する。
「あんたがゴツモンの長?」
「そう、若輩ながらな。最近任命されたばかりで、しかもこんな時勢にだから複雑なのだがな。」
苦笑(とおもわる)をしたゴツモンの長が、ふと目線を流して、おや、という顔をしたが、すぐにもとに戻すとさあ、と子供達を案内する。
「疲れたでしょう。たいしたものはありませんが、ちょっとした食事がありますので。どうそ。」
そういえば、と大地たちは空腹を自覚する。
とたんに正直な体は腹の虫を鳴らし、ゴツモンの長は軽く笑ってみせ、大地たちはただ赤面するしかない。
案内された洞窟の中は焚火が炊かれ、いろんな料理が用意されていて、大地たちは遠慮なく食べることにした。
大地は木の実や果実を味わいながらふと視線を巡らせる。
「ここはゴツモンばかりだな。人間はいねえの?」
空腹を満たすべくひたすら食べている大地たちをゴツモンの長は感心してみていたが、大地の質問に笑う。
「ここはデジタルワールドだ。デジタルモンスターしか住めない。人間は基本的にこの世界には来れない。」
「へ、そうなのか。」
「じゃあ、なぜ私たちはここに来れたの?」
「それはこちらから意図的にゲートを開いたからだろう。」
「ゲート?」
「こちらの世界への入り口だな。ワシもよく知らんがね。」
ゴツモンの長は目を閉じて謳うように話す。
「人間の子供達がこちらの世界に来る時。それはデジタルワールドが危機に陥った時。それを救うべくゲートは開かれる。」
「おれたちはデジタルワールドを、この世界を救うために呼ばれたのか。」
「そういうことだ。」
「で、おれたちはまずスピリットを集めなきゃいけない訳だな。」
「ふむ。」
「で、スピリットってなんなんだ。」
「ふむ。ここの世界にきてすぐだからな。ピンとこんだろうな。伝説なのだよ。スピリットはな。生まれたデジモン達はこの話を聞いて育つのだがな。」
「ふ、ふーーん。」
「スピリットはデジモンの要だ。持ち主が危機に陥った時、発動する。だが、誰でもかもが持てるものではない。」
「宝石みたいなもの?」
伊吹が女の子らしく目を輝かせいうが、ゴツモンの長は苦笑を返す。
「確かにどの宝石よりも価値のあるものだが、宝石ではない。」
「では、なんなんだ?」
「持ち主に絶大なる力をもたらすものだ。ワシはそれを操るものを見たがすばらしかった。」
ゴツモンの長は思い出にふけるように目を閉じる。
「そして、破壊しかけたデジタルワールドを救った。その力はすばらしい。だが、恐ろしくもあるかもしれん。」
しみじみというゴツモンの長に大地たちは思わず唾を飲み込む。
「そんなにすごいものなのかァ。」
「なあ、そのスピリットをあんた持っているんだろ?おれたちに譲ってもらえないのか?」
「うむ。ソナタ達がオファニモン様直属のトレールモンによってこちらに来たのだからこの世界を救うものに間違いないか。いいだろう。世界の為だからな。」
大地たちはワッと喜ぶ。
「じゃあ、早速‥。」
「いや、それは明日にしよう。」
ゴツモンの長は手を前に出し、逸る大地たちを止める。
「日も暮れてきた。現在のご時勢だ。夜のこの世界はいろいろと危険なことが多い。明日しっかり夜が明けてスピリットのある居場所に案内しよう。」
「え〜。」
大地たちは軽く落胆したが、洞窟の外は確かに暗い。
「わー。確かに。電気はないんだな。この世界。真っ暗だ。」
「なんだか、無気味ね。」
「そういうことだ。スピリットは安全な場所に隠してある。逃げはせん。そろそろ休みなさい。あまり柔らかい寝床ではないが。」
「あ、有り難うございます。」
「ええ。このまま?うう。お風呂はいりたい〜。」
思わずぼやいた伊吹にゴツモンの女性形がよろしければ、と声をかける。
近くにきれいな泉があり、水であるがよければ、と。
伊吹は入らないよりましだと、そのゴツモンに着いていく。
「わあ。きれい〜。」
月明かりに照らされきらきら光る湖面をみてうっとりする伊吹。
きょろきょろと辺りをみて、視線を感じないことを確認すると服を脱ぐ。
足を水につけるとひやりとしたが、背に腹は代えられないと覚悟して伊吹は泉に身を入れる。
その頃大地たちは、寝床の準備をしている。
ゴツモン達はその堅い体故なにも必要なく休めるが、わざわざ大地たちのためにクッションになるようにと草や、葉っぱをとってきてくれている。
大地たちは感謝しつつも、はしゃいで寝床を作る。
伊吹も帰ってきて、寝床をみて一緒にはしゃぐ。
「これで明日スピリットを手に入れて、1つ前進ってやつだなぁ。」
呑気にいう大地にゴツモンの長は小さくつぶやく。
「スピリットが選んでくれれば、だがな。」
そのつぶやきは誰にも聞こえることなく空気に解けていくのだった。
夜もふけていく。
子供達から安らかな寝息が聞こえる頃。
輝一はそっと寝床から抜け出し、洞窟の外に出る。
なんとなく勘みたいなもので、歩いていくと静かな広場に出る。
そこにゴツモンの長が月を見ながら立っていた。
「来たか。」
「なんとなく話がしたそうだったから。」
輝一が苦笑すると、ゴツモンの長が近くに寄るように手招きし、輝一は彼の側にいく。
向かい合うと視線がほぼ同じになったゴツモンの長はため息をつく。
「輝一だよな?輝二の兄さんだったよな?いったいどうなっているんだ?全く変わってないじゃないか。輝二もこちらに来ているのか?」
「ううん。多分輝二は来ていない。あなたは輝二と仲良かったゴツモンだね?どれくらい時が経ったんだろう。こっちは二週間くらいだよ。」
「2シュウカンというのがどれくらいの期間か想像はつかないがこちらでは気の遠くなるくらいの時が経っている。君たちが伝説になるくらいにはね。」
「そうか。で、あなたは長になるくらいの時間が。」
「ああ、そうさ。世も末だよ。輝二が聞いたら役不足だと指差して笑われそうだがね。あ、そう、今は世も末なのか。」
ゴツモンは苦笑し、そんなことはないよ、と輝一は柔らかく微笑む。
ゴツモンの長は空に浮かぶ月を見上げ輝一もそれに倣う。
「今再びデジタルワールドに危機が訪れようとしている。この辺りはまだいいが、大地は割れ、草木は枯れてデジモン達はおびえて暮らしている。」
「それでおれたちが呼ばれたのか?」
「そうかもしれん。しかし、君にまた逢えるとは思わなかったけどな。」
「さっきは無視してごめん。」
ゴツモンの長は首を傾げる。
「いや、君の仲間達のことを思ってかと。君は前の経過を知っているが、言ってしまえば仲間達に恨まれると思ったのだろう。」
「それもあるよ。でも俺はあまりこちらの記憶はないからね。初めてのデジタルワールドに来たようなものだ。この身ではね。」
「ふむ?」
「本当に俺がこの世界に必要とされているか分からないけど、この世界を本当に俺が救えるのなら。そのことで俺の運命が変わるなら、頑張ってみたいと思う。」
「そうか。‥‥輝二は元気かね?」
「うん。元気。」
喧嘩別れしているので少しばつが悪く声のトーンが変わったことにゴツモンの長も気がついたようだが、笑って頷いてくれた。
「それは良かった。しかし、今度来た子供達はスピリットを受け継げる器なのだろうか。拓也や、輝二と違いオーラみたいなものを感じないのだが。」
「そう見えるの?そうなのかなぁ。確かに俺たち以外にこちらに来ている人間の子供達がいてそちらがスピリットを受け継ぐのかも知れないけどね。」
前の冒険で邂逅した子供達はスピリットを受け継がず冒険していた。
友樹や泉とはあれから交流があるようだが、自分達も彼等のような運命かもしれない。
「だけど‥。」
輝一はトレールモンに乗って運命を変える旅を共にした仲間達、いや仲間にもなってないかもしれないが、彼等の顔をそれぞれ思い浮かべる。
「俺は、自分を、そして彼等を信じてみるよ。」
「そうだな。」
再び輝一とゴツモンの長は月を見上げるのだった。
そこに用をたした大地が並んで立つ輝一とゴツモンの長を偶然目に留め、違和感を持ったが、すぐに打ち消し立ち去ったことは知らなかった。


「うーん。よく寝たぜ。」
大地はあくびをしながら洞窟から出る。
「もうだらしないわね。あっちの泉で顔を洗ってらっしゃい。」
伊吹は女の子らしく身なりを既に整えている。
駿や瑛一も大地と似たようなものである。
「うーん。うるさいなぁ。」
大地の後ろから輝一が声をかける。
「おはよう。」
「おう、はよ。」
大地は輝一の表情をみて思い直す。
昨日何か不振な行動をしていたように思えたのだが気のせいかと。
とても夜更かしをしていたような感じではなく、目覚めもすっきりという感じだったので。
さて、晴天に恵まれ、大地たちはゴツモンの長に案内され、スピリットを目指す。
「うおーい。いつ着くんだよ。」
全員息をつき、やっと進んでいる感じである。
ゴツモンの長は表情一つ変えず進んでいく。
「あともう少しだ。」
「なんかそのセリフ何回聞いたかよ。」
子供達の目の前に現れたのは、足場の厳しい坂道で。
その横には底の見えない崖が広がっている。
「さあ、ついたぞ。」
「あう。やっとかぁ。」
大人が10人は入れそうな横穴があり、ゴツモンの長と子供達はその中に入っていく。
「ああ、ここなら取りに来ようというもの好きはいないだろうなぁ。」
大地たちは息を整える。
「この奥じゃ。」
息を整えて子供達は奥に進む。
しかし。
「どこにあるんだよ。」
大地たちの前には岩の壁が立ちふさがっている。
とてもスピリットらしきものは見えなかった。
「悪用されてはいけないのじゃから、見えないように隠しておる。見つけだしてみよ。ふさわしいものならおのずと見つかるじゃろう?」
大地たちは目を瞬かせる。
「げーっ。試すのかよ。」
「当たり前じゃ。前の勇者たちが守ってきたものじゃ。おいそれと簡単に渡せるかっ。」
「探すったって‥。」
四方には壁が見えるのみで、子供達は首を傾げる。
「心の目を開け耳を澄ませ。心を落ち着かせてスピリットを呼べ。答えが返ってくるはずじゃ。」
「うーーーん。」
それから大地たちは壁に耳をつけたり手をぺたぺたあてスピリットを探るが全く反応はなく。
「やっぱり違うかのう。」
ゴツモンの長は呟き、偶然近くで聞いていた輝一は顔をしかめる。
結局5人ともへたり込んで座ってしまう。
と、そこへ、村から別のゴツモンが駆け込んできた。
「長っ大変です。村に襲撃がありました。」
「何?!」
ゴツモンの長は呻く。
「そうか、スピリットを所有していることが知られたか。村に帰るぞ。」
洞穴を出るゴツモン達に大地たちは慌てて声を掛ける。
「あっ。おいっ。」
「すまないがわしらは村に戻る。アンタ等でスピリットを探してくれ。」
「えっ。あ。おいっ。」
子供達は顔を見合わせる。
「何が起こったんだ。」
「俺達も行こう。」
厳しい顔になって輝一がいい、大地の肩を叩く。
「あ、でもスピリットは?!」
「村のデジモン達は心配じゃないのか?」
「あ、ああそうだよな。世話になったし。」
ゴツモンの長を追い掛けて走りだした輝一を大地達も慌てて追い掛ける。
辿り着いた村では、火の手があがり、ゴツモン達は右往左往している。
中には傷付いているものもあり。
伊吹は息をつめた。
「なんでこんなことに。」
呟く大地に、低い声がかかる。
「スピリットをどこに隠した?大人しく差し出せば皆殺しは止めてやろう。さあ。よこせ。」
「何をいっている。お前なぞにスピリットが操れるわけないだろう?!」
ゴツモンの長が相手に立ちはだかっている。
向かい合うのは見た目黒い犬のような生き物で。
だが、目は赤く濁り、鋭い牙とよだれが見える。
「クククッ。オレ様をばかにするなよ。スピリットを手に入れてこの世界を支配してやるぅ。」
ひゃはは、と笑いゴツモンの長に飛びかかり、子供達は遠くから息を飲んで見守る。
ゴツモンの長はその頑丈な岩の身体で相手の攻撃を受け止める。
さすがに岩でできている身体なので少しの事では傷付かないのだろう。
しかし、黒い生き物がにやりと笑うとさらに力を込めてゴツモンの長を殴り、ゴツモンの長は跳ね飛ばされる。
「ゴツモン!」
輝一が慌てて駆け寄り、ゴツモンを支える。
「悪い、ヘマした。」
打ち所が悪かったのか、ゴツモンの長は動けなくなり、くったりしている。
「人間の子供?!」
黒い生き物は輝一を見て目を見開く。
「くくく、伝説の通りという訳か。しかしそんなものこの俺様が止めてやろう。」
牙をむいて再び飛びかかろうとする。
大地は無意識だった。
「危ない。」
輝一とゴツモンの前に飛び出す。
牙に自分の体を食いやぶられ、激痛も覚悟した。
しかし。
「ぎゃわぅ。」
情けない声をだして黒い生き物は跳ね飛ばされる。
大地の体の回りには黄色い光が取りか囲んでいて。
輝一たちには一瞬の出来事だった。
大地の周りの光がさらに強くなり、大地はデジバイスを取り出す。
洞窟の奥に封印してあったスピリットが、岩を轟音とともに打ち砕き、大地のもとへ飛来してくる。
スピリットが大地と向かいあうと大地はすっとデジバイスを差し出し、スピリットはその中に吸い込まれていく。
目を閉じ開いた大地は手に現れた光の帯にデジバイスを擦り付け光に吸い込まれると別の生き物に変化していた。
「なにっ。」
衝撃から立ち直った敵は目を見張るが、すぐに不敵ないやらしい笑顔に戻り襲いかかる。
「何者だろうと俺様にかなうまい。今度こそ覚悟しろ。」
大地だったものは手を挙げると圧倒的な力で敵を叩きのめす。
それは地の力。
敵は光り輝き、光の帯が現れた。
大地は無意識的に近寄っていき、デジバイスを再び擦り付ける。
その光の帯は吸い込まれていき、黒い生き物は光る卵になり惹かれるように飛んでいった。
ただ呆然と見守る一同の前で謎の生き物は光の帯に包まれ、それが消えると大地が立っている。
大地は肩で息をして、膝をつく。
「あ、?!何だったんだ?」



壊れた建物を修理したり、けが人の看病に走り回った子供達。
その後体力を取り戻したゴツモンの長に連れられ、壁画の前に立つ。
「これは?」
「伝説十闘士の姿じゃ。どの村にも祀ってあるだろう。デジモンの勇者じゃ。」
大地たちは近寄ってみる。
「炎のアグニモン、光のウ゛オルフモン、風のフェアリモン、氷のチャックモン、雷のブリッツモン、大地のグロットモン、木のアルボルモン、水のラーナモン、鋼のメルキューレモン。」
「俺はグロットモンになったのか?デジモンになったのか。」
大地たちは息を飲む。
「そうじゃ。デジタルモンスターになり、驚異的な力で敵を打ち破り、この世界に平和をもたらせた。 これからソナタ達はこれらのスピリットを手に入れていかなければならない。」
「そうか。」
「そこで提案なのだが。」
全員ゴツモンの長を見る。
「炎の町に賢いボコモンというデジモンがいる。彼に旅の同伴を願ってみればいい。前の対戦でも伝説の十闘士に付き添い、いろいろアドバイスしたという。名誉のデジモンだ。きっと協力してもらえるだろう。」
「炎の村のボコモン。」
「西に進め、そうすれば辿りつけるじゃろう。」
一同頷いて壁画を見上げる。
自分にはどんな出会いが待っているのか、期待と覚悟を込めて。


軽い休息をとると子供達は旅立つことにした。
ゴツモン達に見送られ、大地たちはゴツモンの村を出る。
ゴツモンの長が村の出口まで見送ってくれた。
「平和になったらまた来ておくれ。待っておる。」
「ありがとう。いろいろお世話になりました。」
大地たちは手を振り歩き出す。
輝一はゴツモンの長に声をかける。
「俺たちも捨てたもんじゃないでしょ?」
「ああ、そのようだな。過小評価していた。これからの活躍と旅の無事を祈っている。」
「ありがとう。じゃあ。」
輝一は笑って手を振り、少し先をいく大地たちに追い付く。
自分達がこの世界に呼ばれたのはただの偶然でなく必然であると。
それにデジバイスを持っていることも選ばれし子供である証拠ではないかと輝一は思う。
ゴツモン達は大地達の姿が見えなくなるまで手を振っていた。
「なに長と話していたんだ?」
「ん?ちょっとデジモンについて。たいしたことじゃないよ。」
「あ、そう。」
大地はまだ軽い興奮状態にあり、気持ちを落ち着けるため、小さく息を吐く。
輝一はそんな大地の背中を見ながら微笑む。
無意識とはいえ、自分やゴツモンを守ろうと飛び出してきた大地の勇気と少しの無謀さに尊敬と不安を込めて。
そして。
子供達は旅立つ。
次の出会いと冒険を求めて。


続く


輝一メインのオリジナルストーリー
続きです。
オリキャラの大地がまず地のスピリットを手にしました。
こんどはボコモンに逢うための旅に。どんな旅で冒険になるのか。
どうぞおつきあいください。
ちなみに、グロットモンが出ましたが、ビジュアルは原作と違うと思います。
持ち主でその姿を変えるのではないかと。
デジモンのキャラデザインは皆さんのお好みで考え下さいね〜。(逃げ)
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